子どもたちが7か月間かけて、みんなでつくった1泊二日の名古屋旅。
行き先は子どもたちが決め、
見学の手配もルート確認も支払いも、全部子どもたちが役割分担して進めました。
2日目午前中は、名古屋港水族館を見学、名古屋メシも食べて満喫した高学年のみんな。
さて、次なる目的地、リニア・鉄道館に向かいます。
ところが、その道中で何やら雲行きが怪しくなってきて…
第3話はこちら
【高学年】みんなでつくった修学旅行 ③水族館と名古屋メシを満喫。
13:00。
名古屋港水族館を後にして、
さあここからは担当の人たちが道案内をつとめます。
名古屋臨海高速鉄道あおなみ線「稲永駅」を目指して歩いていきます。
道案内の一人が地図を見て、
「こっちや」
と海沿いの道を指して言いました。
もう一人の担当者が小さい声で
「え〜と、もしかしたら、こっちの方が近道かもしれへん」
「そうなん?」
「でも、違うかもしれへんから…」
実は彼は事前に、地図でショートカットできる道を見つけていたのでした。
そのことを知っていたスタッフは
「あ〜、あの時歩きだったらこっちの道が近道って言ってたやつ?」
と声をかけました。でも彼は
「うん。でも自信ないから…」
と言って、そのまま海沿いの道を進むことに同意。
しばらく行くと
「あれ?こっちで合ってるんかな」
しおりを見て、再確認。
ぐるりと方向転換することになり、
結局さっきいた場所が左手に見えてきました。
「やっぱりあれが近道やったね」
「うん。でもまあ、いいやん」
あまり気にしてない様子でした。
「ほら、やっぱり自分が正しかった!」みたいにならないところが、
この男の子のすてきなところです。
歩いて10分のはずが、
行けども行けども辿り着かない・・・
ところが、予定の10分をすぎても、稲永駅は見えてきません。
でも、子どもたちは特に気にすることなく、ずんずん歩いていきました。
20分ぐらい歩いたあたり。
河口の大きな橋はいい眺め。
ずっと向こうにさっきまでいた水族館が小さく見えます。
「駅、まだなん?」
「もうちょっと!ここまっすぐ行って左にあるねん」
みんなだいぶ疲れてきました。
荷物を担いでいるので、よけいに大変です。
行列はどんどん前と後ろで距離が広がってきました。
先頭を歩く道案内の人は、後ろがどんどん遅れてきているので
「もっと早く歩いてーーー!!」
と叫び、
対する後ろ側からは
「前の人、いったん止まってーーー!!」
「こちらは精一杯がんばって歩いてるから、もう少しゆっくり行ってくれへんかな」
と返す。
そんなやりとりが何回か行われました。
みんな体力も気持ちもかなり疲れていました。
しかも、予定通りの電車に乗れなさそうという焦り。
全員が疲労と焦りの中、
ついに、先頭を行く一人の男の子が焦って走り出してしまいました。
列の真ん中あたりにいたスタッフから見ても、
先頭の人はずーっと先に行ってしまい、ゴマ粒のように小さくなってしまいました。
「おーーい!先頭、止まってーーーーー!!」
6年生が言うと、その少し前を歩いている人が伝言ゲームのように
「先頭、止まってーーーー!!」
さらに前の人が
「止まってーーーー!!」
こうして、ようやく先頭が立ち止まり、
後ろの人たちが追い付くことができました。
危ない行動はやめてほしい。
困った時は集まってみんなで話します。
「ちょっと話そうか」
スタッフの声かけでみんなが集まりました。
「さっき、左折の車が列の途中に入ってきて、危なかった」
「歩くスピードは人それぞれやし、案内の人は後ろの人のことを気にしてほしい」
「焦ってしまうのはわかるけど、走らないでほしい」
スタッフから意見とお願いを伝え、
安全に歩くことを確認。
この時点ですでに予定の電車の発車時間はすぎていました。
気を取り直し、一同は再び歩き出しました。
しかし、いったいいつ駅に着くのか・・・
疲れた足をなんとか前に出しながら、
「もうすぐかな」
「これってバスに乗ったほうがよかったんじゃない?」
などど話していました。
ついに駅が見えた・・・!
話し合いの後、15分ほど歩いたあたりで、ついに見えました!
稲永駅!
「おお~!あれや!」
「やっと着いた~~~」
時計の針は13:50すぎ。
結局、水族館からトータル40分も歩いたのでした。
はあ~、疲れた!
子どもたちは駅に着くなり、そこらに座り込んでいました。
なぜ、こんなことになったのか。
どうやら、グーグルマップで道を調べる際に、車の所要時間を徒歩と勘違いしてしまっていたようでした。
でも、驚いたことに、だれもそのことを責めたりする人がいなかったのです。
なんてすてきなんだろう。
スタッフも事前にしっかり確認して、気づいてあげればよかった。
逆に言うと、それくらいに子どもたちに任されているということです。
だって、子どもたちの修学旅行ですから。
もし、事前におとなが気づいて、修正をかけることができていれば、
当日はきっと予定通り、順調な旅を進めることができたと思います。
でも今回、誰も気づかず、自然な形で失敗を体験したことは、
子どもにとってとても大きな生きた学びになったと思います。
そして結果的にこの出来事が、今年の修学旅行の一番のハイライトとなりました笑
つづく。
(A.M)