今年度から導入を試みているピースフルスクールプログラム。
このプログラムは、別名ピーサブルスクールとも呼ばれる、自分も人も大切にするためのコミュニケーションや考え方などを学び、ピースフルコミュニティを形成しようとする、オランダで開発されたシティズンシップ教育プログラムです。
昨年度、文科省委託事業でESD重点校に選んでいただいたお陰で、このプログラムの日本での普及を推進しているクマヒラセキュリティ財団さまにお越しいただき、研修をしていただくことができました。
高学年クラスでは、それを踏まえて実践を始め、今回がその3回目の授業となりました。「やった~!」と声を上げる子もいて、少しずつ子どもたちにも受けいれられてきているようです。
今日のテーマは “視点”。
まずは、簡単に前回の振り返りをした後、今日のプログラムの流れを確認。
「前回は“誤解”について学んだね。今回は“視点”ということについて学ぼう。でも、まずは最初のゲームからね。」
と話して、はじめのゲームからスタートです。
左手の平を上に向け、右の人差し指を隣の人の手の平の上に下向きに立てます。
スタッフの「キャッチ!」の声で素早く左手を握って、隣の人の人差し指を掴みます。
それと同時に、右人差し指をすっと上に逃がし、握られないようにもします。
握ったり、握られたり、ハラハラドキドキです。
途中から、「誰が、いつ言ってもいいよ。」
と伝えると、次々に「キャッチ!」の声が。
「キャロット!」「キャラメル!」「キャノン!」
などの巧妙なフェイントも飛び交いました。
次に、
「みんなで視点について考えよう。これからみんなもよく知っている、あるお話を読みます。よく聞いてね。」
と言って、スタッフが「赤ずきんとおおかみ」を読みました。
このお話は、ほとんどがよく知られている内容と同じ。そして、こう続けました。
「今の話には、もう一つ別のお話があるんだ。そっちの方も聞いてみよう。」
続いて読んだのは、おおかみの視点で書かれた「おおかみと赤ずきん」。
こちらのお話では、おおかみは本当はそんなに悪者ではなく、むしろ一連のことは赤ずきんちゃんのためにやったことだったことが分かったのでした。
「黒幕はおばあさんか!」
「おおかみ、本当はいいヤツだったんだ!」
「視点が変わるだけで、全然違うことが見えてくるね。」
「そういえば、最近何かで見たな。『ぼくのお父さんは、何とかに殺されました』ってヤツ。ん~、なんだったっけ…?」
「あー、知ってる! 桃太郎でしょ!?」
「ああ、それだ! 鬼の子の視点から見たら、そういうことだもんね。」
と“視点”の違いについて理解を深めた後、スタッフが
「じゃあ、実際にみんなの日常でもありそうな場面を、二人の人に演じてもらおうと思います。みきおくん、お母さん、お願いしまーす!」
と言うと、事前に立候補して準備してくれていた二人の子が前に出てきてくれました。拍手ともに、寸劇がスタート。
「ちょっと! 早く片付けなさいよ!」
「え~っ、でもいいじゃん。」
「ダメよ。もう少しで先生が家庭訪問に来ちゃうんだから。」
「だって、このマンガは友達に借りてて、すぐに読まないといけないんだよ~。それにこれくらい、いいじゃん!」
「ゲームも出しっぱなし!」
「それはさあ…」
リアルな演技に、みんな笑いながらも見入っていました。盛り上がってきたところで演技はストップ。
「みきおくんの視点から見えていたもの、感じていたことって何だろう?」
「お母さんの視点からはどう?」
と“視点”を軸に話し合います。
最後に、自分たちの日常の中に起きた“視点”の違いによる対立についてペアで聴き合い、全体で共有。
これまでの内容が、自分たちの日常とつながっていきました。
最後は、“視点”という言葉からつなげて終わりのゲーム。
「キャッチ!」の掛け声と共に誰か一人に目線を送り、目が合った人とハイタッチ!
「ルックダウン、ルックアップ…キャッチ!」
みんなが誰かと目線を合わせられたと同時に、ちょうど時間になりました。
終わった後には、こうして扱ったキーワードや出された意見などを壁に掲示し、学びを日常化していくことを意識しています。
このような学習の積み重ねによって、この学校だけではなく、社会全体が平和を実現していくコミュニティになっていくことを願っています。
(D.H)