遊びの中の話し合い


お昼休み。
2年生から4年生までの女の子たちが、ホールでおにごっこを始めました。
私もそこに入れてもらいました。
「おにごっこのルールは3つあるねん。
まず、場所はホールとキッチンだけな。(キッチンとホールは扉一枚で続いています)
それと、タッチ返しはなし。(タッチされたらそれまでオニだった人にタッチできない)
あと、一人狙いもなし。(一人の人だけをずっとねらい続けること)
じゃあやろう~!」
じゃんけんしてオニが決まりました。
「わあ~~、にげろ~~」
「まてーー!」
こうしてみんなで楽しくやっていたのですが、
しばらくして、4年生のSちゃんが「なあ、一人狙いなしってルール、なしにせえへん?」
と言い出しました。
「だって、今さっきオニになって追いかけてたら、『Sちゃん、一人狙いなしやで』って言われて嫌やってん。」
すると2年生のHちゃんが
「え~っ。一人狙いありにしたらおもしろくないやん」
他の子たちも集まってきて、その場で話し合いが始まりました。
Sちゃん「なあ、一人狙いなしやったらタッチできひんやん」
Hちゃん「でも、一人狙いありやったらおもしろくなくなるやん」
Sちゃん「でも、例えばさあ、Sがオニやったとするやん?誰かにタッチしようとしても
一人狙いできひんかったらタッチできへんやん。それっておもしろくない。」
Hちゃん「でも~」
二人の意見はいつまでたっても平行線。
他の子たちも、真剣に話を聞き始め、「こうじゃないか、ああじゃないか」と熱心に意見を言う子も出てきました。
そこでやむなく私も話に入りました。
私「そもそも、どうして一人狙いなしっていうルールになったんやった?」
Hちゃん「それは、一人狙いしたら、ねらわれてない残りの子たちがぼーっと立ってるだけになって、つまらないから」
私「なるほど。つまり、みんなが楽しくできるように、決まったんやね。」
Hちゃん「そう!」
私「Sちゃんは、おにごっこはタッチするときは必ず誰か一人にタッチするのだから、一人狙いなしってなったらタッチできなくなるって思ってるってこと?」
Sちゃん「だって、さっきオニの時『一人狙いしたらあかん』って言われて嫌やってん。」
私「そっか~」
Sちゃん「それに、おにごっこって狙われたほうが楽しいやん。みんなが公平に狙われるのがいいと思う。その方がみんなが楽しいから」
私「なるほど。つまりSちゃんも、みんなが公平に楽しくおにごっこができる方がいいと思ってるんやね」
Sちゃん「うん!」
私「じゃあ、HちゃんもSちゃんも、みんなが楽しくできるようにしたいっておんなじように思ってるってことか~」
そこに、話を聞いていた他の子も「じゃあ、狙ってる時間を決めたらどう?」など意見を言いました。
そうこうしているうちに、休み時間があと10分を切ってしまい、
一番年下の子が「もう遊ぶ時間がなくなる~~」としびれをきらし始めました。
結局、HちゃんもSちゃんも「みんなで楽しくおにごっこをしたい」「そのためにみんなが公平に狙われるのがよい」という点で一致していたので、残り時間5分でしたがおにごっこを再開することができました。
こんなふうに、きちんと話し合ってお互いの気持ちを整理すれば問題が解決するということを、
子どもたちは遊びの中でも学んでいきます。
こどもの森の子どもたちの中には、こうした話し合いの文化があると感じます。
放課後、Sちゃんが「今日はなんかめっちゃ楽しかった~」とはじけるような笑顔で話してくれたのが
とても印象的でした。
(A.M)