科学実験 恐るべき空気の力(その2)


7月の実験に引き続き、9月も空気の力(大気圧)を実感する実験に取組みました。
先ず、注射器の真空ポンプの使い方の復習を兼ねて、前回と同じペットボトルの実験(ペットボトルから空気を抜けば中央が凹むが、もう一度空気を入れてやると元の形に戻る)を再現しました。
「ポンプを使うと、なぜ凹んだのかな?」とエスミさん。
「空気が減ったから!」
「それは、いま起こったことの説明です。なぜ凹んだかの説明ではありません」
エスミさんは、そう言って100個の空気の成分(青丸=窒素が78個、赤丸=酸素が21個、黒丸=その他の成分が1個…空気の成分とその比率)を描いた図と、空気の成分がペットボトルの内側と外側から互いに押し合っている図を取り出しました。(写真①)
写真①
写真①
「これらの成分が真空中で壁に衝突したときに生まれるのが大気圧です。ポンプで空気を抜けば中の空気が減るので、外から押す力に負けて凹むのです」
「理科の実験では、結果に驚いたりビックリして楽しむだけでは不十分です」。
「4、5年生のみんなは、予め結果を予測して、なぜそうなるのか、その理由を考えて説明ができるようになりましょう」とエスミさん。
いよいよ、水蒸気を冷やして作った真空を使って、空気の圧力(大気圧)の威力を感じ取る6つの実験が始まりました。
1. 真空をつくる
「ビールの空き缶に水を少し入れて、底を十分に熱します。その缶を直ぐ水に入れて冷やすとどうなるか実験します」→(子どもたちが固唾を飲んで見守る中)水に入れた途端、缶はグシャリと潰れました。
「真空ポンプは使わなかったのに、なぜ潰れたのだろう?」。「ヒントは、熱した時、缶から白いものが出ていたね。あれは何だったのかな?」
「わかった! 水蒸気が缶の中の空気を押し出して、缶の中が真空になったからとちゃう?」
「そうだね。水蒸気(気体の水)が空気(窒素や酸素)を追い出して、缶の中は水蒸気だけになる。これに蓋をして、空気が入れないようにして、冷やすと水蒸気(気体の水)が水(液体の水)に戻るのだよ。すると体積が1000分の1になるので缶の中は真空(何もない状態)になるだ。内側から押す力がなくなるから、外の空気が押す力に負けて缶はつぶれるのだね」とエスミさんが解説。
この後、全員一個ずつ空き缶をもらって、実際に水蒸気を冷やして空き缶をつぶしました。(写真②, ③)
写真② 写真③
写真②                  写真③
2.卵の実験
エスミさんは、フラスコを取り出し、水を少し入れて、フラスコの口から湯気が出るまで沸騰させた後火を止めました。そして、このフラスコの口をゆで卵でふさぎました。
「ゆで卵はどうなるでしょう?」
「水蒸気でフラスコの中の空気が無くなるから、卵が吸い込まれる!」
「口の大きさよりも卵の方が大きいので、吸い込むのは無理や!」
実験の開始です。熱したフラスコの口に卵を載せてふたをしたら、直ぐに卵はぐんぐん引き込まれて、フラスコの口いっぱいに縦長に変形していき、最後にポトンと中に落ちました。 (写真④, ⑤, ⑥)
写真④ 写真⑤
写真④                  写真⑤
写真⑥
写真⑥
「じゃあ、そのフラスコ中からゆで卵を取り出すことができるかな?」
「フラスコを割ったらええ!」
「そんな危険なことをしなくても取り出せます」。エスミさんはそう言って、フラスコを逆さにして熱し始めました。すると、発生した水蒸気に押されて、卵がフラスコから徐々に外に出てきました。(写真⑦)
写真⑦
写真⑦
3. 風船の実験
「次は、フラスコに水を少し入れて底から熱し、直ぐにフラスコの口にしぼんだ風船を被せると、風船はどうなるだろう?」
多くは、「水蒸気で膨らんで破裂する!」でしたが、一人だけ、「フラスコの中の空気が無くなって、その中に吸い込まれる!」との意見でした。
結果は如何とみんなが見守る中で、次第に風船がフラスコの中に吸い込まれていき、ついに容器の中一杯に膨らんだではありませんか!(写真⑧, ⑨)
写真⑧ 写真⑨
写真⑧                 写真⑨
さらに、その膨らんだ風船が入ったフラスコを熱してやると、次第に風船が外に出ていって膨らんでいき、ついに立ち上がりました。(写真⑩)
写真⑩
写真⑩
「フラスコに残っていた水が熱せられて発生した水蒸気で、風船が外に追い出されて膨らんだんや!」と子どもたちの声。
これらの実験を通して、空気の強い力と、水が水蒸気になると体積がとても膨らむ(逆に、水蒸気が水になると体積がとても小さくなる)ことを、子どもたちは実感することができました。
4. 噴水の実験
エスミさんが、机上に食紅で着色した水の入った水槽とゴム管が取り付けられた三角フラスコを並べました。
「フラスコに水を少し入れて底から十分に熱して、火から下ろした後、ゴム管をピンチコックでふさぎ、フラスコを水で冷やします」
「ゴム管を緑色の液体に入れてピンチコックをとると何が起こるでしょうか?」
「緑の液体が、ゴム導管を伝ってフラスコに入る。なぜなら、フラスコ内の空気が減って、外より圧力が小さくなるからでーす」
さて、実際に実験を始めたら、なんと緑の液体がフラスコに入ってくるどころか、勢いよく噴水のように噴出して、見る間にフラスコが一杯に緑の液で満たされました。(写真⑪. ⑫)

写真⑪ 写真⑫
写真⑪                 写真⑫
5. 真空砲の実験
今度は、直径が4cm、長さが1mくらいのプラスチックの筒をエスミさんが取り出して、片方にゴム風船を被せ、もう片方は丸いゴムの板で蓋をして手で押えました。真空ポンプで筒から空気を抜いていくと、被せたゴム風船は筒の中に吸い込まれて膨らみ、ゴムの蓋はピッタリと筒に貼り付きました。
「風船に穴をあけると、どうなるでしょうか?」
「外の空気が急に筒に入ってきて、大きな音がする」、「爆発する!」
結果は、大音響と共にゴムの蓋が勢いよく飛びました。「空気の力は、ほんまに凄いんやなあ!」…子どもたちの喚声。(写真⑬)
写真⑬
写真⑬
さらに、筒に紙を丸めた玉をこめてやると、ゴムの蓋と一緒にこの玉も勢いよく飛び出しました。
「自分で実験したい人!」とエスミさんが声を掛けると、今回は全員が希望して、仲良く順番に並んで真空砲を体験しました。
6. ジュースの実験
最後の実験です。「フラスコにジュースを入れて、ストローを挿します。中の空気を真空ポンプで抜いてからストローを吸うと、ジュースはどうなるでしょうか?」
多数意見は、「ジュースがストローを上がってくる」でした。
全員が順番にストローを必死で吸いましたが、ジュースはストローを上がる気配が全くありませんでした。
実験に夢中で、子どもたちは5分も時間がオーバーしていることに全く気がつきませんでした。   (M.M.)