サスティナブルスクールが取り組んだ気候変動 ~地球とわたし~

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論⽂・エッセイ

サスティナブルスクールが取り組んだ気候変動~地球とわたし~

2018/03/23

サスティナブルスクールが取り組んだ気候変動~地球とわたし~

 

サスティナブルスクールが取り組んだ気候変動~地球とわたし~

 認定NPO法人箕面こどもの森学園 藤田 美保

 

 箕面こどもの森学園は、民主的に生きる市民を育むことを目的とし、市民の手で設立された小・中学校(オルタナティブスクール)である。2015年にESDを実践するユネスコスクールに認定され、2016年には、ESD重点校形成事業において、全国で24校のサスティナブルスクールにも選ばれている。その関連から、2017年に、UNESCOの国際プロジェクトの一環で、ホールスクールアプローチ(機関包括型)の気候変動プログラムに学校全体で取り組んできた。 このプロジェクトには、日本を含む25か国が参加していて、日本からは当学園を含めた10校が参加している。今回は、小学1年生から中学3年生までの子どもたちが1学期間をかけて取り組んだ気候変動のプログラムについてお伝えしたい。

 

 

「地球レスキューだいけんきゅう!~低学年[1]の学び~」

「くるしかった!」「むしむしする~!」

ビニール袋の中から出てきた子どもたちが、クラスのみんなに伝えていく。「自分たちが地球だったらどんな感じかな?」というスタッフの問いかけから、大きなビニール袋に入って温度の変化を体感した子どもたちだ。

「地球はずっと入っているから、もっと暑いと思う」などといった声が子どもたちからあがり、「地球レスキューだいけんきゅう!」が始まることとなった。
 まずは、絵本「もったいないばあさん」から「もったいない」精神を学んだ子どもたちは、温暖化を止めるために自分たちの身の丈でできること(電気を大切に使う、ごみを少なくするなど)を出し合い、校内で電気をよく使う場所などに「もったいないシール」を貼って全校に節約を呼びかけていった。

さらに、動物園を見学し、獣医の方から温暖化が動物たちに与えている影響についてお話を聞いたり、「ウータン・森と生活を考える会」の方から、ボルネオ島の森林保護とオランウータンの保護活動のお話を聞いたりもした。

自分たちが学んだことをどうやって伝えていくかを話し合い、「こんな地球だったらいいな」という願いをこめた地球上のいくつかの地域を描いた大きな絵の制作と、「ちーきゅんを救え!エコパワー大作戦」というお芝居を作り、学習発表会で発表した。子どもたちが作ったお芝居は、温暖化ガスで地球が暑くなり、しろくまもパンダも困ってしまうが、みんながエコ活動をすることでエコパワーが上がる。温暖化ガスをそのパワーで吹っ飛ばし、地球も元気になり、しろくまやパンダが助かるというお話。自分たちが何のために「もったいない」活動をしているのかがよく伝わり、観ていた人たちにもとても好評だった。

こうした学習を通して、子どもたちは少しずつ変化していった。「まだ、エアコンはつけなくていい!」とうちわを持参する子。

「裏紙にして使えるよ」と紙を切りそろえてリユースする子。なかには、おうちで「エコ魔」と化して、家族にエコを薦めすぎ、おうちの方から、「不便で困るぐらいなんです(笑)」という声が何人もの保護者から寄せられるほどであった。
 

 

「興味関心から学ぶ気候変動~高学年[2]の学び~」

 高学年と中学部は、気候変動について知っていることを出し合い、その影響でどういうことが起きると思われるかを妄想でもいいので考えてみるというワークショップから気候変動の学習がスタートした。大雪・大雨・台風・地球温暖化など、いろんな現象が取り上げられ、それぞれの影響について話し合った。

 その後、高学年と中学部は、環境問題に第一線で取り組んでおられる方々を講師に招き、地球環境の現実をしっかりと学んでいった。みのおアジェンダ21のみなさんのCO2を計測する器械や人力発電を使ってのワークショップに参加。「ウータン・森と生活を考える会」の方から、パーム油生産のために森林破壊が行われていること、パーム油はスナック菓子や洗剤などわたしたちの生活用品に使われていることなどを学んでいった。また、国連気候変動会議(COP)に日本から参加している地球環境市民会議CASAの方にも来ていただき、リアルタイムの地球環境の現状のお話を伺った。

 初めは、「気候変動と言われても、あまり考えたことがなくよくわからない」という人が多かったが、いろんな方のお話を聞いたり、体験したりするうちに、「今、地球はCO2でいっぱいになっている」「気候変動が自分に意外と関係していることがわかってびっくりした」「地球温暖化や気候変動の対策が、身近にできることがあるとわかってよかった」などの声が多く聞かれるようになり、子どもたちの意識が少しずつ変化していった。

  その後、子どもたちは自分の関心のあるテーマについて個人やグループに分かれて調べ、学習成果を伝える発表会で発表した。天気、二酸化炭素の排出、家庭でできる温暖化対策、動物の危機、植物への影響、絶滅危惧種、ペンギンの危機という観点からの調べたことをパワーポイントやポスターで発表したほか、気候変動による動物への影響をオリジナルの台本を作りペープサートで発表した人や、マンガ本を制作して地球温暖化について説明した人、サンゴの白化について映像を作って発表した人もいた。

 自分の関心のあるテーマを深く調べていく過程で、「植物をこれ以上へらさないようにどうしたらいいかわかった」「温暖化で色んなものが影響を受けていて、その原因が人間だから、人間ってすごいと思った」「人間は動物が苦しんでいるとわかっているのに、なぜエコなどをこころがけないのだろう」など、気付きが深まっていき、低学年からの呼びかけもあり、うちわを持参したり、電気をこまめに消したりと、節電を心がける人が増えていった。

 

 

「自分の関心を深める気候変動~中学部の学び~」

 中学部の人たちは、高学年といっしょに行ったオリエンテーションとゲストのお話に加えて、「地球が壊れる前に」の映画鑑賞も行った上で、気になったことやわかったことなど、たくさんのキーワードを書き出していき、気候変動の自分たちとの関わりについて考えていった。

 ESDに深く根ざす学習を中学部ではワールドオリエンテーション[3]と呼んでいる。自分と世界とのつながりについて学び、自分の世界を広げ深めていくワールドオリエンテーションでは、大きなテーマに関連する小テーマを自分で決め、そのテーマについてレポートを作成し、調べて考えたことをまとめて発表することになっている。今回も、気候変動に関連するテーマを中学生一人ひとりが決めていった。
 「動物への影響」「サンゴの白化」など、小学部でも取り扱われた内容に取り組む人もいれば、「気候変動と医療保険との関係」「温暖化は本当におこっているのか」「気候変動と災害の関係」「温暖化で得をする人がいるのか」など、中学部ならではの視点に取り組む人もいた。

 ちょうど気候変動の学習に取り組んでいた頃に、アメリカがパリ協定から離脱するという出来事が起きた。そのため、中学部では、アメリカの離脱について考える時間をもつことになった。自分の関心から気候変動への理解を深めている最中の中学生たちは、この出来事に違和感や漠然とした不安を抱いていたようだったが、アメリカでも「WE ARE STILL IN(私たちは、まだパリ協定の中にいる)」と主張する動きがあることなどがわかると、複雑な状況は理解しながらも「少し安心した」とホッとした様子だった。

 それぞれの関心から学びを深めていった中学生たち。「温暖化が実感しづらい」「寒冷化との関係もあるから、地球温暖化って本当に起こっているの?」という声がありながらも、「動物に影響が出ていることで身近に感じられた」「自分ができることはしようと思う」などと発表していた。

 

「地球レスキューこどもの森会議 ~全校生徒による会議~」

 身近なことから取り組んでいくことの大切さを学んだ子どもたち。全校集会でも話し合い、学びの集大成として、全校生徒による「地球レスキューこどもの森会議」を開催し、この学習が終わっても、持続的に全校で取り組んでいくことを決めることになった。

まずは、校内にアイデアを募集するポストを置き、広く意見を集めることにした。すると、「洗い物をしているときに洗剤を使っているときは一旦水を止める」「キッチンの水道は、シャワーモードの方が節約になるらしい」「校庭に植物を植える」「昼休みは電気を消す」「1年に何回かエコウィークを作る」など、たくさんのアイデアが子どもたちから集まってきた。会議の三役(議長・ボード書記・記録)も子どもたちから募り、会議当日までに、三役が集まってアイデアを整理し、会議の進行方法などについても話し合いを行った。

会議当日。ゲストにお話に来ていただいた方々や保護者の方だけでなく、地域の方や地域の大学の学生の方々など多くの方に参加していただき、全校生徒による「地球レスキューこどもも森会議」が始まった。

 出されたアイデアを全員で共有した後、ファミリーグループ[4]に分かれて、どのアイデアを学校全体で取り組んでいくものにするのかを話し合っていった。

 各グループの意見をまとめた結果、「明るいときは電気を消す」「できるだけうちわを使う」「トイレの流す水は小」「歩ける人はなるべく歩く」などの12項目が選ばれ、ゲストの方からもコメントをいただき、地球レスキューこどもの森会議で決まったこととして採択された。採択されたことは、ポスターにして校内に掲示され、一人ひとりが自分の行動を見つめていくことになった。

 この学習に取り組む前は、気候変動と言われても、何か遠い世界の話で、自分たちの生活とどう結びついているのか考える機会もなかった子どもたちも多かったが、一つひとつの学習を積み重ね、学びを深めていく中で、自分と気候変動とのかかわりに気が付いていくこととなった。そして、一人ひとりの意識が変化し、自分たちにもできる小さな行動が積み重なっていくことが、大きな変化を生み出していくことを学ぶ機会になった。

今後も、子どもたちが自分自身を見つめ、自分と世界とのつながりを考えながら、自分ごととして何を引き受けていくのかを問う学びを積み重ねていきたいと思う。



[1] 低学年クラスは、小1~小3までの24名が学ぶ異年齢のクラス。

[2] 高学年クラスは、小4~小6までの19名が学ぶ異年齢のクラス。

[3] イエナプラン教育では、理科・社会科など教科の区別はなく、ワールドオリエンテーションという総合学習の形態が用いられている。本学園のワールドオリエンテーションは、この考え方を参考にしている。

[4] 小学1年生から中学3年生までの全校生徒を縦割りにして作っている小グループのことをファミリーグループと呼んでいる。

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