第44回教育カフェ・マラソン~加藤良太さん(アドボカシー・オーガナイザー)~


第44回教育カフェマラソンのゲストスピーカーは、アドボカシーオーガナイザーの加藤良太さんでした。

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加藤さんは、市民社会の立場から「対話とプロセスづくり」で社会課題の解決を目指す「アドボカシー」活動を通じ、地域から世界まで多くの分野・課題に携わっています。

ここでいう「アドボカシー」とは、市民やNPO・NGO団体が社会課題の解決に向けて「こうしたほうがいい」と考える解決策を政府や企業、社会に提案して、実現を促す活動を意味しています。

加藤さんがアドボカシーの活動に携わるようになった経緯は、中学時代にまで遡ります。

加藤さんは中学時代愛知県一宮市にある公立中学校に通っていましたが、当時の愛知県は全国でも有数の管理教育の盛んな県だっただけに、学校内では男子は丸刈り、女子はおかっぱ頭でなければならないという厳しい校則に抵抗を覚えたそうです。

また、一宮市の中心部には経済的に恵まれない人々やニューカマーの住民が集まっていた影響で、加藤さんの中学校は、ガラスの破片がよく散らばったり、校庭で 生徒たちがバイクを乗り回したり、教師がトイレで暴行を受けたり、逆に体育教師が生徒に体罰を行うことが日常茶飯事だったほど荒れていたようです。

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当時の加藤さんは、荒れた子どもたちや教師に反発する子どもたちは学校側から抑圧を受けていることを感じ、なんとかしてこの状況を変えられないだろうか、校則の自由化ができないだろうかと考えるようになり、生徒会長に立候補しようと決意します。

しかし、生徒会長に立候補する際、無投票当選にしてまで調整しようとする学校側の姿勢に加藤さんは憤りを感じ、生徒会選挙をボイコットします。

そして、加藤さんが中学3年生の時、なんとかして校則を変えるきっかけはないかと考えて情報収集をしていた時に、一宮市の全小中学校で汚職事件が起こったこ とがきっかけで、加藤さんらの活動に協力的なPTAの役員さんからの提案で、TBSの報道特集にその情報を提供するようになります。すると、そのニュース は大々的にテレビに流されるほどのニュースとなり、一宮市内の全中学校の生徒会が一斉に校則に関するアンケートを取り、それを教育委員会と市議会に提出 し、ようやく校則の自由化にたどり着くようになります。

中学卒業後、加藤さんは愛知県内でも有数の進学校である一宮高 校に入学しますが、そこでの生活は中学時代とは対照的に、校則も自由で、教育内容も学習指導要領があるのかないのかというほど教師たちが独創的な授業を展 開していたらしく、文化祭前に加藤さんが大学受験に備えて図書館で勉強していた時に、教師から「なんでこんな時に勉強してるんだ?みんな文化祭の準備をしてるんだから、わざわざ勉強なんかするな」と言われたことがあるほど自由だったようです(笑)。

しかしながら、他校では偏差値が低くなればなるほど自由がなくなるという「自由の序列化」に加藤さんは疑問を抱くようになります。

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大学時代は同志社大学に在学していましたが、在学中の1995年に阪神・淡路大震災が発生したのを機にボランティア活動に参加し、その中でNPO・NGO法 人の存在を知るようになり、NPO・NGOの活動にも積極的に関わるようになり、社会のために役立てたいという意識が強まっていきます。

大学卒業後は、就職は決まっていたものの、NPO活動に没頭していたために大学のゼミの先生から「大学ではあまり勉強していないから、大学院に行ってもう少 し勉強してみないか」と言われ、大学院に進学します。大学院修士1年目の夏休みのころに、JICA国際協力機構が大学院生向けのインターンシップを初めて おこなうという話を知ってそれに応募し、福島県の二本松にある訓練施設で協力隊の募集とOB・OGのための就職支援のお手伝いや、ワークショップの学校で ファシリテーションなどを教えて、海外協力隊の参加に備えて経験を積んでいきます。

ところが、JICAは国の機関だけに組織内で立場に よって序列化されている官僚制的なシステムや、外務省とJICAとの関与にも疑問を抱き、「こんな状況でODAや国際協力をやるぐらいなら、もっと別の観 点で国際協力をしている団体はないかな」と思うようになります。そんな中で京都に戻った際に、偶然に国際協力NGOの分野でODAの問題に取り組む団体を知り、その団体へインタビューをしに行くとお互いに意気投合します。そのNGO活動を通して、途上国の現場で自分たちができる範囲内でやれることも重要だ が、それだけでは途上国の問題を解決できないので世界中の課題の中にも貧しさがあるので、それを解決するにはアドボカシーを通して政府や国際機関を変えな ければならないという気持ちで活動し、政府や行政とも対話を通して現状の課題を共有し合って物事を動かせるということに気付くようになります。

これらの体験を活かして、対話やプロセスづくりを通して社会の仕組みを変えようという仲間を作りたいという想いから、あどぼの学校を立ち上げます。

以上のお話を通して、対話やプロセスづくりを通したアドボカシーから、デモクラシー(民主主義)へとつなげていくことの大切さをお話しされました。

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ディスカッションでは、1つ目に「18歳選挙権が実現して初の国政選挙も経た中で、改めて、子どもたちと共に学びたい・共有したい政治体験(教育)とはどのよ うなものか」、2つ目に「「物言う市民」に自らがなる・これから育んでいく上で、それに必要な考え方資質はどのような物ものがあるか(能力というより、ス ピリット(精神)や視座・視点として)」という議題で、論議が進められました。

1つ目の議題では、「政治家の人々と積極的に関わる」「身近なことから政治に関心を持つ」などの声が挙がり、2つ目の議題では、「子どものころから自己肯定感を高めること」「世の中の仕組みに疑問をもつこと」などの声が挙がりました。

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昨今の政治が揺れ動いている中、我々市民が常に国の制度の在り方などに問題意識をもって、対話を通して我々ができることは何かについて考えなければなりませんね。(R・F)

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次は10月21日(金)話題提供者:村島和代さん(助産師)

です。お楽しみに!

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