”水”をテーマに探究~ワールドオリエンテーション19年度1学期発表会~


今回のワールドオリエンテーションは、スタッフからテーマについて大事なポイントを伝えて、それに沿って自分でテーマを設定していくという形ではなく、”水”というキーワードからたくさんの疑問や問いを出し合って集め、そこからそれぞれのテーマを見つけて探究していくという、新しい形にチャレンジしました!

そして、発表会はクラス内でそれぞれが学習した内容をシェアするような形式で、5分間プレゼンテーションとブース発表を組み合わせて行いました。

 

司会の2人が学習の流れの説明から始まりました。

 

『海の生き物』

 

「水」というテーマから海を連想して、そこから自分の中に湧いてきた疑問について取り組みました。疑問とは、海の生き物について

・どうやって水の中で呼吸をしているのか?

・どうやって水分補給をしているのか?

・どうやって睡眠をとっているのか?

という3つでした。

魚の呼吸方法だけでなくクジラのような哺乳類で海で過ごす生き物についても調べ、ミオグロビンというタンパク質が関係していることなど、それぞれの疑問からわかったことを伝えました。

同じ哺乳類でも、ヒトとクジラのような海の生き物とでは随分と違います。そのことに不思議を感じたり、海の生き物のように、人間が海の水を飲むことができるようになれば、水をめぐる争いは起こらなくなるのではないか、また調べた情報はいったいどのようにしてわかったのだろう、というような意見や疑問を伝えました。

 

『水を生み出す』

「これからの争いは”水”を目的としたものになる」という言葉を聞き、本当にそうなのだろうか、だとしたらなぜそういうことになっているのか、ということについて考えてみました。

実際にデータを用いて水不足の現状を報告。SDGsの17の目標にも掲げられているように確かに多くの人が水に困っていることがわかります。

水をきれいにする道具は開発されているが、そもそも液体の水が無い場所では使いようがない。では、液体の水が無い場所でそれを生み出す方法を見いだせばいいのではないか、ということで情報を集めました。

化学的な方法も含めていくつか方法を見つけ、最後にWarka Waterを紹介。

自然界からヒントを得て、自然現象だけで水を集める竹製の塔です。これがあれば、水蒸気を集めて飲める水を生み出すことができます。メリットとデメリットも紹介しました。

世界の争いごとの原因をなくすための、水の可能性について探究することができました。

 

『日本人に合う水とは』

学校の学習で水の飲み比べをした時に、軟水と硬水の違いの大きさに驚きました。水はほとんど味がしないし、どれを買っても同じだと思っていたけど、実際に飲み比べてみると差を実感。更にその場で好みについて聞いたら、全員が軟水を選んで、硬水は口に合わないと言ったのです。

逆に考えると、いつも硬水を飲んでいるような国では軟水は美味しくないと思うとしたら不思議だなと感じました。

そこで軟水と硬水について自分で詳しく調べて、数字を含めて説明しました。そして違いについて伝え、軟水と硬水が出る国ではその土地の地層が関係していることを紹介しました。

 

更に、普段飲む水の違いによってどのような影響が出るかについて目を向けました。実際に硬水でシャンプーをしてみたり、食文化への影響を調べたり、硬水を飲んでいると身長が伸びやすくなるという説についても紹介しました。

軟水が日本人に合っているというのがよく実感できた。ただそれは軟水を使って生活をしてきた歴史があって、日本人にとって軟水が馴染んでいるだけで、たとえ日本で生まれてもすぐに硬水の地域で暮らし始めたとしたら硬水に馴染んだ身体になるのではないか、と考えました。

 

『食と水』

学習で水の飲み比べをした時に、違いに衝撃を受けたことから軟水と硬水について調べ始め、食と水の関係に着目して探究しました。

まずは軟水と硬水の違いについて説明し、その後に自分のアクションについて紹介しました。

 

まずは「神戸ウォーター」を汲みに行ったこと。ワールドオリエンテーションの学習時間に外出届を出してクラスメイトと2人で神戸に出かけ、神戸ウォーターを汲みに行きました。これは中硬水と呼ばれるもので、軟水と硬水の間にあるものでした。

それも含めて、改めて学校のいろんな人を巻き込んで飲み比べをしました。内容もただの水だけでなく、コーヒーや紅茶にしてみたらどうか、ということにも興味を持って実験しました。いろんな人に飲んでもらいアンケートをして順位を出しました。

そこからわかったことは…「好みの問題」ということでした。

そこで行き詰ってしまいますが、その実験をした時にスタッフの1人が「国によって軟水と硬水の違いがあって、それが食にも影響を与えてきた」という話をしてくれました。

それをきっかけに、軟水と硬水を用意して家でクッキングの実験に取り組みました。水以外の条件を揃えて煮物とお澄ましを作りました。硬水だと「だし」を取ろうとしただけで白いものが出てきたなど、明確な違いが出ました。それを写真を使って見せて分かりやすく伝えました。

 

結果的に水と食の関わりの大きさを感じ、それが文化に影響してきたことを実感。「水を大切にするということは食を守ることでもある」と感じました。

 

『水の分子』

「水」から連想をしたことは「虹」や「氷」でした。それについて調べてみるとどちらにも、そして水が関連することは何でも「水の分子」が関係していることを知りました。そこで、それについて調べてみることに。

 

自分の疑問を出してみて、最終的に「水の分子とは」「水が氷になると体積が増えるのはなぜ?」「水の由来」「水の三態」「水と光の関係:虹」「海はなぜ青いのか」「地球上の水の分布」「世界の水道水、軟水と硬水」「ムペンバ効果」「日本の水資源の利用量」「動き回る水分子」という項目を挙げ、それぞれについて調べてまとめました。

その場で参加者に対して気になる項目は?と聞いて、それを説明しました。

調べてみて、本当に面白かったと感じました。水は「水の分子」がたくさん連なってできているということや、水の由来を調べた時にもともと地球には海がなかったということを知って驚きました。

虹は昼間にはほとんど見られず、朝か夕方にでることが多いということも知りました。そして虹が保存できたらいいのにと思いました。虹を作る実験は成功しなかったけど、またプロジェクトの時間で作りたいと思いました。

 

『結晶』

「水」と聞いて最初に興味を持ったのはアートでしたがそれだけでは知識にならないと思いました。そこで自然が人工的ではなく綺麗なアートとして「雪の結晶」に着目することにしました。更に実際に見たことがないので、自分で作ってみたいと思いました。

まず「どうやってできているのか」「あられやひょうとはどう違うのか」「実際に作ることができるのか」「結晶はなぜ六角形なのか」など疑問を洗い出して調べました。

 

その中で中谷宇吉郎さんの「雪は天から送られてきた手紙である」という言葉や、杉原恵理子さんの「まったく同じ形の結晶は一つとしてないと考えられている」という言葉に出会いました。

そして自分でも作ってみる実験にトライ。ポリ袋に水蒸気を入れて冷凍庫で凍らせる実験、ドライアイスを使って結晶を作る実験の2つの方法にチャレンジ。結果は残念ながら失敗で、結晶は得られませんでしたが1つ目の実験の2度目のトライで水蒸気が凍ったような感じを得ることはできました。

実験を振り返り、反省点も具体的に挙げ、今後またチャレンジしたいという意欲を見せました。

また実験の難しさを実感することで自然の力のすごさも実感しました。結晶から空の天気がわかるというつながりを知り、身近なものがもっと大きなものにつながっているということに気付くことができました。

 

ここで前半が終了し、後半へ。

司会の人の紹介で後半の人の発表が始まりました。

 

『海水魚と淡水魚の違い』

「水」と聞いて海の生き物に関心を向けて、その中でも海水魚と淡水魚の違いについて興味を持ってその疑問から調べて行きました。

最初は食べるものが違ったり、卵を産む場所が違うから海に住んだり川に住んだりという風に住処が違い、呼ばれ方も違うのではないかと考えていました。ところが調べてみるとそうではありませんでした。

そこから調べたことを汽水魚という分類も含めて整理して説明しました。体内の塩分調節機能の違いが魚がどこで生活するかに大きく影響していることを伝えました。また、好適環境水という海水魚も淡水魚の生活できる水があることも紹介。

 

 

当初自分が思っていたことではなく、水の塩分と身体の機能の関係で生きる場所が違っていることを知り、人間が水の中では息ができなくて陸上で過ごしているのと同じようなことなのかなと自分に寄せて考えを巡らせました。そして海水魚と淡水魚はどのようにして決まっていったのか魚の歴史も辿ってみたいと思いました。

 

『津波の恐ろしさ・減災』

最初は川と海の境目に興味を持って、実際の境目を見に行こうと検討していましたが、考え直した結果、地震から起こる津波をテーマにすることにしました。実は小学生の時にも地震をプロジェクトとして調べたことがあり、その危険性を知って、もっと広く知ってほしいと思っていたのです。今回も、南海トラフ巨大地震がいつ起こってもおかしくないので、そのことにつながるように津波について調べて紹介することにしました。

 

東日本大震災で実際に起こった津波について触れ、今後の対策の必要性を伝えました。調べる中で、学習の時間で一人で外出し、津波・高潮ステーションに行きました。そこで実際に質問してきたことについても紹介。

今回の学習を通して以前よりも今後起こるであろう地震の危険性や恐ろしさを知ることができました。改めて自分でも備えをしていくことを確認し、その上でこれからも情報を集め、いろんな人に情報発信をしたり、何かが起こった時には募金活動もしたいと考えました。

 

『逆浸透膜』

海水は塩分が入っていて、生活用水としては利用できません。だけど、その塩分を取り除くことができたら使えるのではないか、海水を真水にできたら水が足りない国がそれを使うことができるのではないかと考え、その方法を探ることにしました。

調べる時に疑問を挙げました。海水を飲めるようにする方法はあるのか?海水から塩を取り除くことはできるのか?海水を真水に変えられたら、それはどこに運ばれるのだろうか?

調べると海水を真水に変える方法は2つあり、それは蒸留と逆浸透膜を使った方法でした。その2つについて紹介し、逆浸透膜のメリット・デメリットや現在の使用状況について伝えました。

海水は真水に変えられる。それが広まれば水不足は解消されるかもしれないけど、かなりお金がかかるので、使うなら非常事態の時か本当に水が不足しているところに分けたりするのがいいと思いました。

 

『水道の歴史と未来』

水のことを調べ始めると古代ローマ時代の水道の情報と出会い、その精巧な仕組みに興味を持ったのがきっかけでした。

それからローマの水道について詳しく調べ、世界最古の水道が今にも通じるような高い技術で作られていたことに驚きました。更に日本の水道の歴史について調べたり、自分で計画を立て、京都に出かけ琵琶湖疎水を見学しに行きました。

それから現在の日本の水道の現状からわかる未来に向けた課題をまとめて紹介。歴史をもとに今の時代でできることについて考えました。

この学習を経て、当たり前のように享受している水の恵みに改めて感謝することができ、無駄な使い方をしないようにしようと思いました。また今後老朽化などで水道管を新しくすることが必要になってくるので、その時に寄付ができるといいなと考えました。水道の歴史にを知って、身近な水にもいろんな過去があったのだと知ることができました。

 

『水の流れを作る』

初めは水の美しさを写真でとらえてみたいと思い、学習時間を使って京都の川にでかけることにしましたが、一緒に行ったクラスメイトが水路を見に行くということで同行し、水路に興味を持ちました。そして家では池や田んぼはありますが、水路を作ったことがなかったので、実際に家の庭で水路づくりにチャレンジすることに。

家の池は流れがなくて水が臭くなっている、だから水路を作って流れをもたらしたいと考えました。

 

設計図を描いて溝を掘って、水を流す実験をしてその結果から試行錯誤して計画を修正し…何日もかけて作業を進めていきました。その様子を写真を交えて伝えました。

結果的に発表の日までに完成させることはできませんでしたが、今後の計画についても検討しまとめていました。

水路づくりが地形の傾斜と大きく関わっているということを実感し、人工的に自然を再現するのが難しいことを肌で感じ、多くのことを学びました。

調べることと実践することとの両立を目指して、ある程度バランスよく取り組むことができた、という感想でした。

 

『世界に広がる国際河川による水争い~私達にできることはなにか?~』

世界では石油やダイヤモンドをめぐって資源戦争が起きている。もっと身近であるはずの水では争いは起きていないのだろうか?という疑問から調べてみることに。そうするとやはり争いが起こっていることがわかりました。

今回取り上げるのは中東のヨルダン川の水をめぐる争い。イスラエルの現状です。地図を示して場所を解説。そして会場の人たちに問いかけました。

もし自分の国に水がなくて、周りの国に水が欲しいとお願いに行ったら断られてしまった、あなたならどうする?

・他国に助けを求める

・周りの国の水源地帯を占領する

・水を求めて井戸を掘り続ける

会場の人たちも自分で考えて手を挙げました。

実際イスラエルは水源地帯を占領するという行動に出ました。ただそれはイスラエルだけが悪いのではないのではないか、断ることに正当な理由はあったのだろうか。

水について調べる中で、水ジャーナリストと呼ばれる橋本淳司さんにも直接インタビューしました。そこで聞いた水の大切さを紹介。

そしてイスラエルの件に関しては、その武力行使は許すことができないけど、周辺諸国の対応もおかしいのではないかと感じました。

そこで自分のできることととしては政治家になって日本の水利用を見直したり、水に関する教育を充実させたりすること。将来、日本の水を守れるようになりたいと思いを表現しました。

 

 

これで前半の5分間プレゼンテーションが終わり、そこからはブース発表の時間に。

前半後半に分かれてブースで詳しく発表したり、質問を受けて話したりしました。

 

模造紙に雪の結晶を描いて、それに沿った形で調べたことを張って表現しました!

 

 

調べた項目をカードで分けてまとめました。ブースではそれを見せながら詳しく説明しました。

 

その他にもブースだからこその距離感で、見に来てくれた人に説明したり、質疑応答したり、それぞれの学びを深めました。

水について様々な視点から捉え、学ぶことができる素敵な時間になりました。(J.S.)