第15回教育カフェ・マラソン~永橋 爲介さん


第15回教育カフェ・マラソンは、永橋爲介さん(立命館大学 産業社会学部 現代社会学科 准教授)をお迎えしました。
今年最後の教育カフェ・マラソンです。

まず最初に、本日(熟議の代わりに)実践するワーク「環境的自叙伝(Environmental Autobiography)」についてご説明いただきました。
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子どもの頃の環境を絵で表現し、それについて他者と説明し合うことで相互理解が深まるだけでなく、自分自身をより深く知ることができるという、とても重要な機会を与えてくれるワーク、とのこと。

自分がほっとする場所・風景とは?自分にとってのSacred Place(聖なる場所・かけがえのない場所)とは?

なぜかディズニーランドやUSJのような華やかな場所を挙げる人はおらず、「におい・空気・音・味・一緒にいた人」といった記憶と共に、とても穏やかな場所を想起する人がほとんど、とのことでした。

永橋さんのお話の後、実際にワーク「環境的自叙伝」に参加者全員で取り組みました。
目を閉じ、ゆっくり息を吸って吐いて、を繰り返し、少しずつ潜在意識の深みへと誘われます。
そして少しずつ、参加者それぞれの「Sacred Place」を色鉛筆で描いていきます。絵は「(描くときに)誰とも話さない」「上手く描こうとしない」ことがポイントだそうです。
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永橋さんのおっしゃった通り、(稲刈り後の)田んぼ、(ザリガニ・カエルを捕まえていた)川、物置小屋、釣りをしていた土手、家の庭、ベランダ、廊下、縁側、(野菜を育てていた)畑、水たまり・・・等々、まさに「におい・空気・音・味・一緒にいた人」を思わせる作品群が出揃いました。
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それらをまず各グループで絵を見せながら説明し合った後、「展覧会」と称して他グループの作品も観賞します。
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さらには感想を書いたポストイット「ラブレター」を、気になった作品にぺたぺたと貼り付けていきます。

ポストイットがたくさん貼られた絵を眺めつつ、ある方が「初対面なのに、しかも世代を超えて、こうして共感してもらっている、共感し合えているのが、とにかくうれしい」とおっしゃっていて、まさにその通りという結果になりました。そうした共感を呼ぶ特徴として、先生が「Sacred Place」の説明として挙げられました「Dirty enough to be happy」「暗い・泥だらけ・汚い(場所ほど強く記憶に根付いている)」という言葉に、大変感銘を受けました。

目を閉じたり、呼吸法を使って、潜在意識から絵を描くことで、自分が無意識に避けようとすること(避けようとしていたこと)に向き合うトレーニングとなり、「人と人、人と場所、過去と今、今と未来、自分の中にある複数の自分」をつなぐことができるようになる、そういう働きが「環境的自叙伝」にあるということがとてもよくわかりました。
また時には、「つらい思い出」さえも「物語」として思い出すことによって「救われる」ことがあるというお話も大変印象的した。

今回の教育カフェ・マラソンを通じて、当日実際に行ったワークを通じて、生活に「環境的自叙伝」を取り入れようと思った参加者も多かったのではないでしょうか。(K.T)
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