ごみの学校 寺井さんのお話


中学部のワールドオリエンテーションでは、ごみの学校から寺井正幸さんに来ていただき、お話を聞きました。寺井さんは産業廃棄物やリサイクルにかかわる会社で働きながら、ごみの学校の活動をされています。寺井さんたちは「ごみ問題は正しく理解されていない」と考えて、ごみの実態を学び考え行動する人を育てるためにも「ごみを通してわくわくする社会をつくろう」という理念のもとにごみの学校を設立されました。

◎これは何からできている?

早速、寺井さんは「これは何からできているでしょう?」とかばんを出されました。そのかばんを手にとり、それぞれに「何やろう?わからんな」「ペットボトル?」などと推測していきました。寺井さんからヒントとして、「持ち手の部分の手触りで分かるはず」と言われ、「わかった!」と声があがりました。「この感触はシートベルト!」正解は、エアバッグとシートベルト。意外なものがリサイクルされて作られたかばんでした。

◎人類の発展と資源

これまで私たちは地球の資源を使って経済を発展させてきましたが、あまりにも地球から資源を借りすぎている状況です。結果として、気候変動、貧困問題、資源の枯渇などの問題がおきています。本来ならば未来の世代が使う分の資源を借りている状態で、このままだと資源は枯渇してしまうと言われています。日本でも豪雨の被害や猛暑日の増加などが問題となっています。

 

◎日本人の暮らしとごみ

日本人の暮らしとごみの関わりについてもさかのぼって教えてもらいました。

ここでクイズ!「江戸時代、買取されていたものはなんでしょう?①灰、②古い桶、③うんこ」正解と思うものに、それぞれ手を挙げていきますが、3つとも手を挙げた人も。答えは…3つともが正解!江戸時代はいろんなものが資源として扱われていたそうです。江戸時代は環境にやさしいリサイクル生活をしていたのですね。

ものがない戦争の時代が終わると、戦後復興のなかで経済成長を進めていきました。このころには「消費が美徳」として人びとは豊かさを求めていきます。高度経済成長では過去20年間でごみの量は5倍になったそうです。そうしたなかで公害問題もおきました。これまでごみを埋め立てたり焼却したりしてきましたが、その量を減らすためにも、リサイクル法が制定されリサイクルが注目されるようになりました。

◎身近なごみのその後

ここでまたクイズ!ペットボトルから作れないものは何でしょう?

①スーツ、②ランドセル、③カーペット、④トイレットペーパー

トイレットペーパーを選んだ人から、「ペーパーだからプラスチックとは違う」という指摘があり、寺井さんからは「いいところに気づいたね!」と言われました。トイレットペーパー以外はペットボトルを再利用してできるそうです。

プラスチックや紙のリサイクルのついても教えてもらいました。また、小型家電は東京オリンピックのメダルとしてリサイクルされるそうです。

寺井さんが分解したパソコンの中身を見せてくれました。パソコンが好きな中学生は興味津々で手に取っていました。このようにパソコンなどは分解されて、価値のある部品が回収され、リサイクルされます。ちなみに部品の中ではCPUが一番高く売れるそうです。(CPUはパソコンの頭脳だと中学生が教えてくれました)

◎世界のプラごみ、プラスチックは悪者か。

プラスチックは夢の素材として増え続けてきました。実はプラごみ(プラスチックごみ)の1/3は容器包装であり、日本はプラごみの排出量で世界第2位。そのうえ日本ではごみの64%がリサイクルされずに焼却されているそうです。プラスチックをリサイクルするうえで問題となるのは、品質が劣化する点、複数あるプラスチックを同じ材質である必要があるという点があげられます。しっかり分ければリサイクルできるのですが、無限にリサイクルすることはできません。

さらに日本が品質の悪いプラごみを途上国へ輸出しているという問題にも触れられ、中国のドキュメンタリー動画「プラスチックチャイナ」を観ました。ごみに囲まれた劣悪な環境で働いている様子が映し出され、みな真剣に見つめていました。

今では中国がごみの輸入に対して規制を設けていますが、中学生からは「日本が輸出していた分のごみは、今はどうしているのか?」という質問があがりました。少しずつ減らされているものの、いまだに他の国へ輸出をしているそうです。東南アジア諸国は「私たちの国は世界のごみ捨て場じゃない!」と訴えています。

自然分解されないプラスチックは細かく粉砕されてマイクロプラスチックとなります。さらには海洋汚染などの深刻な問題を引き起こしています。

では、プラスチックは悪なのでしょうか。工業や医療の分野ではプラスチックによって救われることがあります。では逆に使い捨てプラスチックは必要なのかを考えてみる必要があります。

◎どうしたらよいか話し合ってみよう

ここまで寺井さんの話を聞いて、私たちはどういうことができるかお互いに話し合ってみることになりました。そこからはこんな意見が…

・微生物が分解できるプラスチックを開発する。

・ペットボトルを入れるとお金になる装置があると聞いたことがある。

・パッケージをなくすべき。

・再利用できないプラスチックをなくす。

また、中学生からは「リサイクルされた商品は値段が高くて買えない。どうしたらいいと思いますか?」という質問も出ました。実際にリサイクルは手間がかかる分、価格も高くなります。寺井さんからは、「そうした製品を買うことは、姿勢を示すことにつながる。環境をよくしようとする人たちはいる。共感してくれる人たちを増やすことが大切で、市場に出回るようになる」と教えてもらいました。

寺井さんからはそのほかにも、5R(Reduce-Reuse-Recycle-Replace-Refuse)など、ごみを削減するための取り組みについて紹介してもらいました。

中学部のワールドオリエンテーションでは「見えないコスト―使う責任」のテーマのもと、それぞれが探究を進めています。今回、ごみ問題に対して、実際に行動を起こしている寺井さんのお話は刺激を受けるものだったのではないかと思います。知る、調べるにとどまらず、自分にできることを考え実行すること、問題意識を提示して仲間をつくること。寺井さんが示してくれたのは、そうした一歩踏み出す姿勢だと感じました。(S.N)