こどもの森は話し合いをとても大切にしている学校で、
子どもたちはさまざまな場面で集まり、話し合いをして意思決定しています。
今回改めて、子どもたちと一緒に会議の進め方について考える機会を持ちました。
初めにスタッフから、話し合いの現状についての確認がありました。
「みんなが普段やっている話し合いで、司会とボード係と記録係があるよね。
その人たちの仕事ってなんだっけ?」
スタッフが問いかけると、子どもたちは
「司会は、話し合いを進行させたり、話をまとめる」
「ボードは、意見をボードに書く。記録は、ノートに決まったことを書く」
「そうやね。ボードや記録はなんのために書くの?」
スタッフが再度問いかけると、子どもたちは、
「え~、それは、ボードは前に出た意見も書いておいたらわかるから、話しやすくなるし。
記録は、前回話したことを思い出せるように」
さすが中学生。
それぞれの仕事の意味がよくわかっています。
さて、ここから本題に入ります。
「みんなが普段やっている話し合いって、みんなが『それがいいね』って合意することを大切にしているよね。
誰も嫌な気持ちにならない案を選んでる。
実はそういうやり方のことを『勝負なし法』って言います」
「勝負なし法は名前の通り、勝ち負けのない話し合いの仕方です。
発言力のある人の意見が通ったり、誰かががまんしたりするのではなくて。」
勝負なし法の6段階を、普段みんながやっている話し合いの進め方に照らし合わせながら
1つ1つ確認していきました。
【勝負なし法6段階】
1、聞き合う
まずは何が問題なのか、提案者や関係者から話を聞きます。
キーワードは「何があったの?」「どうして?」「どんな気持ち?」
ここでしっかりと話を聞いて、問題点がなんなのかをはっきりさせることがポイントです。
2、案出し
解決方法を探ります。
ここではなるべくたくさんの案が出ることが重要です。
ですので、「え~、そんなんいやや」とか「それは無理!」などの否定はしないようにします。
代わりに、「なるほどね~」「それもあるね」などという言葉で、どんな案でもいったん受け止めるようにします。
どんな案でも受け入れられると、場に安心感が生まれ、心も頭も柔らかくなって、結果思いがけない名案が浮かんできたりするものです。
3、予想
出てきた案について、それをやってみたらどうなるかを予想します。
「案出し」の時には否定しないでいましたが、ここでは「これはうまくいきそうにない」と否定的な意見を言うことができます。
4、案選び
こうして予想した結果、うまくいきそうな案を選びます。
5、実行
選んだ案を実行します。
役割分担などがあれば、ここで決めます。
6、ふりかえり
やってみてうまくいったかどうか、ふりかえります。
うまくいけばOK。うまくいかなければ、またみんなで話し合いをすればいいということを確認しておきます。
こどもの森のこれまでの話し合いのやり方の場合、
2と3と4がごちゃ混ぜになっていたことがわかりました。
さて、ここからは実際に話し合いの練習をやってもらいました。
今、クラスで困っていることの中で「ipadの充電について」という議題があるので、
そのことについて話し合いをすることになりました。
司会を引き受けたのは2年生の男の子。
「今から中学部集会を始めます。議題は、『ipadの充電について』です。
議案を出した人、説明してください」
提案者「えっと、ipadやねんけど、使おうと思ったらバッテリーがほとんどなくて、使えなくて困ることがあるねん」
司会「それについて、何か意見はありますか?」
そこでスタッフが介入。
「はい、ストップ~。司会の人はすみませんが、提案者の人が話したことを繰り返してください。
そうすることで、提案者が自分の言ったことをしっかり受け止めてもらえたという安心感があることや、
聞き漏らした人が話についてきやすくなるという利点があるので」
司会「わかった。じゃあ、
ipadを使おうとしたら充電が切れてて困ってるんですね」
提案者「そう」
ここで、ボード係の3年生の女の子が言いました。
「司会の人が繰り返してくれると、ボードが書きやすいわ~」
なるほど。ボード係にとっても、司会が繰り返すことで仕事が正確にやりやすくなるという利点があったようです。
この後、司会の人がとてもていねいに出てきた意見を繰り返しながら、6段階に沿って話を進めてくれたおかげで、
話し合いがとても盛り上がり、いろんな案が生まれました。
以下、参加した子どもたちの感想です。
・話し合った感がありました。
・ちょっと変えただけで、話がわかりやすくなった
・1回1回確認しながら進めたので、とてもわかりやすかった
・ボード係は聞きながら書くので大変だけど、司会が繰り返してくれたのでやりやすくなった
・メリットデメリットをしっかり把握した上で解決方法を決めることができた
実は、今回のipad問題は、中学部集会で以前も話し合っていたのですが、
その時決まった解決方法はあまりうまく機能していなかったそうです。
それは、この6段階でいうと、1「聞き合う」が不十分だったためではないかと思われます。
今回は、何が問題なのか、そこをはっきりさせることができたので、
以前の時には思いつかなかった方法を考えつくことができたのではないかと思います。
ちょっと面倒はありますが、やはりしっかりと聞くことはとても大切で効果的なんだなあと、改めて感じさせてもらうワークショップとなりました。
(A.M)
ちなみに
会議の進め方ワークショップは小学部の人たち向けにも行いました。
それぞれブログに上がっていますので参考まで。
高学年の様子はこちら
低学年の様子はこちら