~韓国・朝鮮半島に目をむけて~ 2学期ワールドオリエンテーション発表会


ワールドオリエンテーションの学習発表会を行いました。

2学期の間、中学部では『韓国・朝鮮半島』をテーマに学期を通して学んできました。毎年、中学部では海外研修に行きます。今年の行き先は韓国。現地のオルタナティブスールの、ゼチョンガンジー学校との交流を行いました。準備をはじめた9月はおりしもメディアでも日本と韓国の関係についても、いろいろな報道を目にしていた時期。二つの国の関係が、ここ最近の中でも複雑な状況であることは、子どもたちも感じ理解していました。

 

中学部の学習では、今の日韓関係をふまえて、過去の歴史をたどりながら、コリアNGOセンターやコリアンタウンを訪問したりしながら学んできました。食や文化、そして政治のことまで、子どもたちが持った素朴な問いを広げ、中学生一人ひとりが個人テーマ決め、探究していくことにチャレンジしました。

 

司会の人が背景を簡単に説明しました

 

韓国では現地の中高生と1週間生活をともにしながら過ごしました。そしてその中では高校生と歴史や今の日韓関係について対話をすること、アンケートを通して韓国の中高生の意見を知ること、社会科の先生にインタビューし歴史・南北関係・韓国社会について知ること、そして忠州市街にある慰安婦少女像を見学に行くなどをしました。また北朝鮮との国境地帯を訪れ、朝鮮半島の南北の分断についても学んできました。

韓国での様子はこちらの記事をご覧ください↓

韓国・堤川ガンジースクールと交流!海外研修’19(前半)

 

学んだ成果をお伝えする発表会では、5分間のプレゼンテーションとブース発表を行いました。

 

「朝鮮半島の南北問題」

南北分断の歴史や朝鮮半島の統一について調べました。また韓国では社会科の先生にインタビューをしたことで、韓国の人たちが統一についてどのような想いを抱いているのかを知りました。そこから、お互いの国がどのようにしたら統一ができるのかを自分自身で考えました。

一方、外の国の人たちが考えていることが朝鮮半島の人たちが望んでいる方法なのか、自分たちが正しいと思っていることが本当に正しいのか、調べながら感じたことを紹介しました。また、朝鮮半島の現実を目にして「飢えることなく、あたたかな家で健康に過ごせることが、どれほど幸せだったのか」とあらためて感じたことを伝えました。

 

「朝鮮半島と他国の関係」

韓国では、社会科の先生にインタビューをしたことで、日韓関係を考えていくうちに二つの国だけでなく、実はアメリカ・中国・北朝鮮との5カ国の関係が今の緊張状態を作っているのではと気づきました。

そこで5カ国の関係を図で表して整理することに取り組みました。南北の統一が日韓両国や諸外国にとってどのような影響があるのかから、それぞれの国がどうしたらより平和的に今の状況を解決していけるのかを、自分で仮説を立てて伝えました。

 

「日本と韓国のちがいと共通点」

日本と韓国は近い国だけど、『どんなちがいや共通点ってあるんだろう?』とふと抱いた素朴な疑問から、「自分の国についてどう思う?」「あなたが幸せに感じるときはいつ?」「相手の国に行った時に思ったことは?」について現地の高校生にアンケートをとって調べていきました。

幸せに感じることは、同じような意見が多いことに気づき、そうだったら文化や言葉、国に関係なく幸せを分かち合えると感じたことを伝えました。

 

「人と偏見」

お家での会話の中から、もしかすると人は『その国=その国の人』とイメージを作っているのではと考えました。自身も渡韓前は報道を目にしたことで、マイナスな印象を持っていましたが、実際に現地に行ってみると想像と違っていたことを感じ、自分が偏見や先入観を持っていたことに気づきました。

帰国後にSNSなどで韓国に対しての誹謗を見ると違和感を覚える、とその気持ちの変化も伝えました。

 

「韓国について疑問に思ったこと」

韓国の文化や教育、苗字や食べ物、気になったことをいくつか調べ、インターネットの情報と実際に行ってみた経験を比較してまとめました。

特に韓国と日本の間では、以前は約30分の時差がありましたが、韓国併合の際に日本と時間を合わせたために、時差がなくなったと調べるうちに分かったことを伝えました。

 

「朝鮮半島とベルリンの壁」

朝鮮半島が南北に分断されたことが、「東西ドイツの分断と似ているところがあるのでは?」「なぜ朝鮮半島は統一しないの?」ということに疑問を持ちました。調べていくうちに、朝鮮半島だけのことではなく、アメリカや中国など周辺国の影響が大きいことに気がつきました。

また「朝鮮半島は、その周辺国の対立の緩衝帯になっているのでは、またそのような対立がなくなり、周辺国が統一を望んだ時に、統一が実現するのでは」と考えたことを伝えました。

 

「韓国ブーム」

日韓関係が悪いと言われている中で、なぜ第3次の韓国ブームが起きているのかに疑問をもって調べ、現地でアンケート調査もしました。

 

調べていくうちに若い人たちの間では、お互いの国の文化を受け入れてそれぞれの国でブームが起きていることや、これまでのブームにも違いがあることが分かり、そのことを伝えました。

 

「K-POPと日韓のつながり」

以前より関心があった音楽を問いに、現地の高校生にアンケートを依頼し情報を集めました。

韓国で起こった不買運動や日韓の関係が、今でもK-popブームにはあまり影響がことを知り、K-popが日韓をつなぐ架け橋になっていると感じたことを伝えました。

 

「韓国と日本~アニメがつなげるもの~」

現地の高校生にアンケートを依頼し情報を集めました。韓国では電車の中で「天気の子」の広告を目にし、日本のアニメが広がっていることも実感しました。

不買運動がおこったりしている今の日韓関係の中でも、アニメがつなげている役割と可能性の大きさについて伝えました。

 

「歴史的問題と日韓関係」

今の日韓関係の状況はどのような原因で起こっているのかに疑問にもち、調べました。現地で行ったアンケートにより、韓国の人たちが過去の植民地時代について、どのような気持ちを今もっているのかを知りました。

そこから自分たちがこれからできることを見つめ伝えました。

 

「日本と韓国のお互いへの印象」

韓国と日本について、それぞれの国の人が自分の国と相手の国の歴史や文化についてどのように感じているのかについて、アンケートを通して比較しました。

アンケートではお互いについて良くない印象を持っているように感じたため、悪いところより良いところを見つけて、お互いを理解しあえたらいいと感じたことを伝えました。

 

「日韓の未来と両国の人々にできること」

日韓の友好都市の交流が停止されていることをきっかけに、今の関係がなぜ起こっているのかに目を向けました。過去の歴史、そして現在の徴用工や「慰安婦」問題など時事的な情報と、実際に韓国に行って見聞きしたことをもとに、自分の考えでまとめていきました。この問題を解決するために、『政治家ができること、市民の人たちができることと』など自身が思うことを提案しました。

また「お互いの政府への印象に左右されずに、その国の人たちを嫌わないこと」と伝え発表を締めくくりました。

 

 

ブース発表では、見に来られた一般の方や保護者の方からの質問を受けながら、子どもたち自身の言葉で調べたことや感じたことを伝えました。

 

子どもたちは、

「もう少しニュースなどを自分なりに見る必要がある」

「その国=その国の人は~だ。と先入観や偏見を勝手に持っていたことに気づいた」

「日本に帰ってきてニュースを見ると言い過ぎているところがあるから、ちゃんと伝えてほしいと思った」

「韓国の人の気持ちを知れた」

「歴史では、もっと韓国のことを学んだ方がいいと思った」

「以前は、韓国は日本を嫌っている・怖いと思っていたけれど、

行ってみると怖い場所ではなく、お互い嫌い合っているわけではないと分かった」

「戦争は人の悲しみや憎しみ、怒りしか生み出さないと学んだ。そんな戦争を二度と起こして

はいけないと思った」

「メディアの情報より、やはり自分で目にしたこと・聴いたことの方が信用できると実感した」

など、人との出会いや現地の空気を通して肌で感じたこと、学んだことを伝えました。

 

政治や社会的な状況にかかわりなく、自分たちにできることはお互いの国に関心をもちつづけ、人と人とで対話をつづけること。そんな子どもたち自身の目線で紡いだ学びとつながりが、日本と韓国の二つの国をつなげ続ける、小さなきっかけになればと願っています。