詩と出会う・自分と出会う


中学部1・2年生の「日本語共同」の時間では、多角的に考えたり、哲学的に考えたり、日本語の知識を得ることなどに取り組んでいます。

「どんなこと、やってみたい?」と学期初めに聞いたところ、日頃あまり発言しないAちゃんがぼそっと「詩を読みたい」とつぶやきました。

いつもはみんながやりたいものを選んでいくのですが、今回は、「Aちゃんが提案してくれたんだから、一度やってみよう!」ということになり、取り組むことになりました。

1回目は、たくさんの詩集の中から、自分が一番心に残った詩を選び、その詩を紙に書き写しました。すぐに選ぶ人、時間がかかる人、いろいろでしたが、全員が詩を選ぶことができました。

2回目以降は、それぞれが選んだ詩をみんなの前で朗読し、その詩を選んだ理由を説明して、それを聴いたみんなから、感じたことを返してもらうという時間をとっていきました。

まず、始めはBくん。Bくんは、自分の気持ちや想いを言葉にするのが少し苦手な人なので、発表も小さな声で始まりました。

けれども、Bくんの詩を聴いたとき、部屋の空気が一気に変わって、みんなが自分の内側に向かい始めたのを感じるほど、大きな衝撃が走りました。

Bくんが選んだ詩は、「有無」

有無

無の状態は 真っ白なのか 真っ黒なのか                        白なら白があり 黒なら黒があり                            両方とも違うのなら 無があり                             何もないのに 無いことがあることになる

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Bくんは、選んだ理由を、こう話してくれました。
「小学生の低学年のときから、宇宙の始まりに興味があって、宇宙の始まりは、ビッグバンだけど、その前は何やったんやろう・・・って、ずっと思ってきたから、この詩を見たときに、自分がずっと考えてきたことと同じや!って思った」

それに受けて、みんなが自分はどう感じたかをメッセージのカタチで返していきました。
「深い詩で、これが世界の仕組みかも」「ないことがあることになったら、本当に何もない世界はないのかもしれない」「無の状態のキーワードが深いし、この詩に共感するのがすごいと思う」など、いろんなメッセージがありました。

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Bくんに続いて、次々と発表が行われ、そのたびに、場が深まっていきました。

続いて選ばれた詩は、「ひかりのあるところ」「わたしと小鳥とすずと」「ただ生きる」   「流行」 最後に、言いだしっぺのAちゃんが詩を発表しました。

おばけならいうだろう

けしゴムをつくったから えんぴつをつくったんだ とおばかさんがいった         えんぴつをつくったから けしゴムをつくったんだ とせいんせいがいった         えんぴつをつくったのに けしゴムをつくったのか とかみさまならいうかな
けしゴムをつくったのに えんぴつをつくったのか とおばけならいうだろう

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Aちゃんがこの詩を選んだ理由は、「直感」。

「言葉では言えないけど、こういうこっていうのが分かった」「その人の立場や考え方によって全然違う意味の解釈になる」などのメッセージがありました。

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「この詩を読む時間って、すごい哲学だと思った」
この時間の後に、Cちゃんが言った言葉がすごく印象的でした。

深い時間をじっくり味わった中学部の人たち。「来年度も、また、この詩を読むのをやろう!」ということになりました。