一学期の世界の料理は「トルコ」です。トルコはボスポラス海峡をはさんで、アジアとヨーロッパにまたがっている国です。イスタンブールはビザンツ帝国時代にはコンスタンティノープルとよばれ、首都として、またギリシャ正教の聖地だけではなく、東西交易の中継地として繁栄しました。オスマン帝国の時代には政治・経済・文化の中心として栄え、現在もトプカプ宮殿、アヤソフィア、スルタン・アフメトモスク(ブルーモスク)などの美しい歴史的建造物が多く残っています。
事前学習では、まずトルコの国の位置を確認し、周辺にどんな国々があるのかを調べました。「トルコってこんなところにあるんや。」「えー、まわりの国全然わかれへん。」こどもたちは頭にハテナを浮かべながらプリントの白地図とにらめっこし、「ここはイタリアやな~。そしたら隣はどこやった?ギリシャ?ウーン。」とそれぞれに地図帳で確認しながらすすめました。
人口、面積、気候、言語や宗教、世界遺産、食文化などをスライドや動画を見ながら学習しました。スタッフが旅行をした時の体験談から、外を歩くほとんどの人が男性だったり、女性は髪が見えないようすっぽりと布で隠すことや働く女性がとても少ないなどの違いを強く感じたことや美しさにうっとりする世界遺産のモスクにキリスト教、イスラム教の双方の歴史を感じ取れたこと、トルコの猫が驚くほど穏やかで歴史的建造物の上もスタスタ歩くほど自由にすごし、人びとにとても愛されていることなどの話がありました。1890年のエルトゥールル号遭難事件を経て、日本とトルコの親交が現在も続き、親日の国と言われていることなどを知りました。
動画ではトルコアイスを販売する人と買いに来た人との愉快なやりとりや、イスタンブールの大きなバザールでの活気のある人波、キラキラしたショーウィンドウのお店など、画面から異国情緒あふれる景色をみんなで楽しみました。
「アイス、めっちゃ伸びるやん。」「お店、キラッキラやな~」
調理実習では、「キョフテのトマト煮込み」「ビベル・ドルマス(ピーマンのトマト煮込み)」「ライスプディング」を3グループに分かれて作りました。
キョフテはひき肉でエスニックな香辛料クミン、ミントなどをよく効かせて、長細い形のミートボールを作り、ピーマン、トマトと一緒に煮込みます。
「ミートボールはこれぐらいの大きさでいいのかな~?」「フライパンに具材全部入らへん。混ぜるのむつかしそう。」
山盛りになりそうなので、ミートボールを焼いて一旦取り出しておいてから野菜やトマトソースを調理することにしました。
「ビベル・ドルマス(ピーマンのトマト煮込み)」は大き目のピーマンに塩コショウ、香辛料を混ぜたひき肉と米を詰め、トマトで蓋をしたものを鍋に立てて入れ、トマトを入れたブイヨンでコトコト煮込みます。
ピーマンに鶏ひき肉を詰める作業はでは、「ピーマンの肉詰めってどうやってつくるのかと思ってたけど、こうするんやってわかったわ。」「これ、ちょっとパンパンになったわ。詰めすぎかな~」と話しながら手を動かし、トマトでふたをしました。緑と赤がとても映えたきれいな姿になりました。
「ライスプディング」は卵と牛乳を混ぜた液にお米を入れ、柔らかになるまでゆっくりと気長に混ぜながら火を入れます。
「卵の黄身と白身を分けるなんて、ムリムリ~。」「シナモンを粉にするの楽しそう。やるやる~。」などワイワイ言いながら、他の班から手伝いに入ってくれる人もいて、レシピを確認しながら調理していきました。ミルでシナモンを挽くと独特の甘い香りが漂ってきます。
かたくり粉を水に溶かして混ぜる行程では、ボールの中で固くなったりトロトロと流れていく様子を見て「わー、これダイラタンシー現象や!すごいすごい!ほらほら見て~。やってみて~!」と目の前の不思議な現象に「ほんまや、片栗粉でもできるんや~」と感心しながらボウルの中のトロトロを興味深く体験しました。プディングの液を容器にそそぐ時には「ココットに均等に入れるのムズイわ~」と少しこぼれた液を拭きながら量がかたよらないように慎重に作業しました。
ホールに机を並べ、来上がった3種の料理を皿に分けてみんなでいただきました。
「おいしー。けっこう、うまくできたわ」
「これはちょっと苦手やな~。ごはん、入れる意味ある~?(ライスプディングを食べて)」「シナモン好きやわ。もうちょっといれよ~」など口々に感想を言いながら初めてのトルコ料理を味わいました。ふりかえりでは、玉ねぎやピーマンなど野菜を切るのが難しかったことや、ちゃんと出来上がるのか不安だったけどうまくできてよかったなどの感想がありました。
その後、トルコについて一人ひとりが興味を持ったことを調べ、それぞれでまとめました。
「オスマン帝国について」「トルコの世界遺産」「トルコの大統領」「トルコ語」「トルコの猫」「トルコのマナー」「トルコの伝統菓子」「トルコアイスの秘密」などがありました。トルコアイスを調べてみると、サーレップというラン科の植物の根を乾燥させたものを材料に使い、アイスが伸びる元になっているが、現在絶滅危機にあるので輸出禁止になっているということやモロッコにルーツを持つ人は「トルコとモロッコの共通点」を調べ、同じイスラムの国なので食文化ではフムスやサラダの材料、クミンなど香辛料を使った味付けやお肉の種類が同じ、宗教ではモスクでのお祈りが生活の中にあること、幾何学模様や花柄などカラフルなインテリアが似ていることなどが手書きのイラストにわかりやすく描かれていました。
今回トルコの国を知ることで、自分たちとは違うイスラムの文化にも興味を持ち、違いや繋がりを考える機会になればと思います。現在、大阪からイスタンブールに直行で行ける便もあり、近い将来こどもたちが自分で旅する機会があるかもしれないと思いを巡らし、その時も穏やかで楽しい旅であることを願います。
m.y