ただ遊んでいるだけにも見える時間。「プロジェクト」とはどういう学びの時間なのか?
こどもの森では、「プロジェクト」という学習時間があります。
その時間では、こどもたちは自分の好きなことややりたいことができます。
例えば、
- 木工で家づくり
- サッカーのキーパー練習
- 今度やる将棋大会の企画
- PCで3Dモデリング
- クッキング
などなど。
こどもの森では、このプロジェクトの時間がたっぷりあって、プロジェクトを楽しみにしているこどもたちもたくさんいます。
ですが、この「プロジェクト」という時間に「何を学んでいるのか?」「この時間を通してどんな変容が起こっているのか?」「どんなサポートや環境がより良いと言えるのか?」といったことを伝えるのはなかなか難しいことだなとも思っています。
みる人からみると「ただ自由に遊んでいる時間」「スタッフの積極的なサポートがない」といった時間に見えるかもしれません。
ただ、スタッフからすると確実に何か大事なものが育まれていて、こどもの森では欠かせない学習時間なことは間違いありません。そのことを、「外部向けに伝えれるようになろう」ということで、「プロジェクトで大切にしている経験」と「プロジェクトの育ちのイメージ」を表現してみることにしました。
こどもたちはプロジェクトを通してどうなっていくんだろう?〜プロジェクトの目的とは〜
はじめにプロジェクトの目的について話し合いました。
まず、今までの本に書いてる言葉や、こどもの森の教育のエッセンスから引用して、プロジェクトの目的とはこういうことなんじゃないかという叩き台を提示してみました。
叩き台は、①自分の好きなこと・やりたいことに気づく②自分の人生をデザインする力は育むの2つが目的なんじゃないかというものでした。
その後の話し合いではいろんな意見が出ました。
- 自分の人生をデザインする力というのは少し言い過ぎな気がする。
- 「自分を知る」ということが大きいのではないか。
- 自分の中にある動機に向き合うことが大事。
- タスクと言われるような、自分の興味関心以外の必要性みたいなところから生まれたものはプロジェクトと言えるのか?
- 夢はなくていい。夢があることが良いことではない。
- 生きるということはプロジェクトそのもの。
プロジェクトの目的は「自分を知る」こと

話し合いながら、その場でまとめていったスライド
話し合いの中で、最終的に合意した部分としては、プロジェクトの目的とは「自分を知る」ということでした。
プロジェクトをやることを通して、こどもたちはいろんな物事に出会います。
その中で「これをやるのが好きだな」とか「このやり方は自分に合っている」とか「これは自分に合っていないな」という自分の興味関心に気づいていきます。
また、「めんどさい」という気持ちや「なかなか気乗りしない自分」、「うまくいかなくてイライラしてしまう自分」「達成感や喜びを感じている自分」といった、自分自身への気づきも生まれてきます。
生きるということはプロジェクトそのものです。生きている限り、自分という乗り物に乗り続けることになります。
自分の凸凹や自分の興味関心を知ることが、市民として、誰かとともに生きていく上で、とても大事なことなのだと思います。
プロジェクトに段階はあるのか?〜低学年・高学年・中学部のプロジェクトで大切にしていることをまとめてみる〜
最後に、「プロジェクトに発達段階みたいなものはあるのだろうか?」という話をしました。
低学年・高学年・中学部とこどもたちの発達段階によって、プロジェクトの「感じ」はなんとなく違うような気がしていました。ですので、今回は、各クラスの段階をイメージしながら、それぞれのクラスのプロジェクトで大切にしてみたいことを文章にまとめてみました。
書き方として、「低学年では」と書いていますが、これは「低学年だからこういう学び方だ」ということが言いたいわけではありません。
こどもそれぞれに発達段階はあるし、発達段階だけでは捉えきれない部分もあると思います。
「大きくまとめるとこんなフェーズがあると言えるんじゃないか」というものだと思って、読んでもらえたらと思います。
低学年(小1〜3年生)
低学年では、プロジェクトを通して、「自分の内側を自然に表現する」ことの楽しさに気が付き、自分の好きなことを知ってほしいと思っています。
子どもたちには、失敗を恐れず、気持ちの赴くままに自由にやる経験や、とにかくやってみる経験を積んでほしいです。私たちが大切にしているのは、自分が何をしたいかを自分に問い、浮かんできたことをカタチにしようとしている姿です。自分が主導し、何かを創るプロセスの中で、「楽しい・夢中になれる」感覚や、達成感を味わってほしいと思っています。
そのために、私たちは、子どもの思いを否定せずにひとまず受け止めて、一緒に考えていくことを大切にしています。子どもたちに混ざって、スタッフも「自分の内側を自然に表現する」ことや、作品を見たり聞いたりしてもらえる場を通して、表現することが自然なことであるという文化を育んでいます。
高学年(小4〜6年生)
高学年では、プロジェクトを通して、自分の好きな表現を見つけて、自分の好きなことから自分自身に向き合うことを知ってほしいと思っています。
子どもたちには、してみたことを振り返って、新しい発見や気づきを見つける経験を積んでほしいです。私たちが大切にしているのは、自分がどうしたかったのかを自分に問い、次につなげてカタチにしようとしている姿です。自分が主導し、何かを創るプロセスの中で、「むずかしい、でもおもしろい」感覚や、わくわくする感じを味わってほしいと思っています。
そのために、私たちは、本人の立場に立ちつつも、客観的な視点を伝え、自己決定をしていける環境をつくることを大切にしています。
中学部(中1〜3年生)
中学部では、プロジェクトを通して、他者と繋がり、様々な表現に出会い、自分の好きを広げたり、深めていく楽しさを知ってほしいと思っています。
子どもたちには、自分のしたことが外とつながり、自分の世界が広がり、知的好奇心がかき立てられる経験を積んでほしいです。私たちが大切にしているのは、自分がこれからどうしたいのか自分に問い、それをカタチにしようと自分と向き合っている姿です。自分が主導し、何かを創るプロセスの中で、「もっと知りたい、学びたい」感覚や、感動を味わってほしいと思っています。
そのために、私たちは、一人一人のありのままの表現を認め、いろんなチャレンジができる環境をつくることを大切にしています。そんな場を通して、自分の表現はもちろん、他の人の表現も大事なその人の声だと互いに認めていける文化を育んでいます。
読んでみて、どうだったでしょうか?
プロジェクトの学びについて感じたこと・考えたことがあればぜひお聞かせください。
こどもの森のスタッフ研修は、いつも自分たちの内面や自分たちのしていることに深く潜っていく時間となります。
これからもこどもの森の学びとはどのようなものなのか見つめていきたいと思います。

今回の研修をまとめるステキなことば。
(T.Y)