「かずの不思議」で九九グラフを作りました


今回の「かずの不思議」は、九九の表の中に思議なグラフがひそんでいること。そして、そのグラフは九九の性質をみごとに反映していることを発見することが目的です。
参加者は二人(5年生と6年生)でしたが、しっかりと集中して取組み、90分の予定時間がオーバしても夢中で作業を楽しんでいました。
まず、「奇妙な九九の表」つくりに取り組みました。それは1×1~9×9までの結果を記した普通の九九ではなく、「九九の結果を10で割ったその余り」を記した九九の表です。
<10の位を無視した九九の表>
奇妙な九九の表
この表を書いている途中で、「一々わり算をしなくても、九九の1の位だけ書けばいいんだ!」と、声が上がりました(注)。一桁の数を10で割ったあまりはその数自身であることに、子どもたちは最初戸惑っていましたが、上の掛け声で、「奇妙な九九の表」つくりに自信がもてたようでした。
(注)「九九の結果を10でわった余り」は、数学的には「10を法とする剰余類の計算」なので、確かにその通り。私としては、安易にその事実を子どもたちに知らせるのではなく、このこと自体を自分たちで発見してもらおうと思っていました。
次に、予め準備してきた「十角形盤」(正十角形の頂点に釘を打ち、その傍に0から9までの数字を書いた円盤)を取り出して子どもに渡し、次の作業に取り組んでもらいました。
①毛糸のひもを0番の釘に結ぶ
②そのひもを「奇妙な九九の表」をもとに、1の段から9の段まで釘にかけていく
③最後にひもを0の釘に戻して、完成したグラフを手もとの用紙に写し取る。その際に、ひもの進む向きも矢印で記入する
完成した全部のグラフを見ながら、気付いたことを言ってもらいました。
(1)釘から釘へひもの動きは、1の段は一つずつ、2の段は二つずつ、3の段は三つずつ進み、最後の9の段までこの調子。これは九九の増え方がそうなっているから!
(2)グラフは多角形か多角星で、すべて左右対象な図になる。
1の段…正十角形、2の段…正五角形、3の段…正十多角星、4の段…正五多角星
6の段…正五多角星、7の段…正十多角星、8の段…正五角形、9の段…正十角形

(3)1と9の段、2と8の段、3と7の段、4と6の段のグラフは全く同じグラフになる。
<毛糸で作った九九グラフ…1の段から6の段>
全体
アミ 「(3)で確認した『全く同じ』は、もっと詳しく見ても果たしてそうかな?」
子ども「形は同じだけど、ひもの動きは全く逆向きだよ」
アミ 「そうだ、よく気付いたね。ひもの動きが逆向きになっていることと、すべてのグラフが左右対称になっていることは、中・高等学校で『負の数』や『剰余類』という数学の考え方を学べば説明できるようになる。いまから楽しみにしておくといいよ」
子ども「楽しみではなく、苦しみになるかもしれない!!」
アミ 「さっきの(2)のまとめには、5の段が入ってないけど、これは仲間外れにするしかないのかなあ?」
子ども「5の段は、0から5、5から0 を繰り返すので、0と5を結ぶ線分になっているだけ。これは本当はペチャンコな多角形だ!」
アミ 「そのとおり、だから正二角形とでも考えれば、仲間外れにしなくてもいいんだね」
こうして、子どもたちは5つの性質を発見しました。
「十角形盤」と、ひもをかけている途中のグラフ、そして子どもたちが仕上げたまとめの図を写真でご覧ください。グラフが二重になっているものは、円盤を二回転したことを表しています。
<毛糸の糸で作った九九グラフ…3の段(左)と4の段(右)>
3の段 4の段
また、子どもたちが相談して「0の段は、ひもが進まずに0の釘をクルクル9回転している」と理解して、0の釘にはわざと〇を重ねて描きました。
<手書きのグラフ…0の段>
0の段
その後、自発的にすべてのグラフを色違いの毛糸で重ねて釘にかけていき、子どもたちは「きれいだね」と顔を見合わせていました。(M.M)
(追記)下図はパソコンで描いた九九グラフの例です。このようにふつうの多角形(2の段)だけでなく、星型(4の段)や多角星(たかくせい)(3の段)もあらわれます。
2の段 4の段 3の段