ちかこ(犬)のこと ~悲しみを書く~


 1学期の最終日、一人の男の子が欠席しました。お母さんから電話があり、「おばあちゃんの家で飼っていた犬がなくなり、悲しんでいて、学校にいけそうにないので、お休みします」とのことでした。
 夏休みが終わり、元気に登校してきました。「あのな~、いっぱい自由作文、書いてきた~」とたくさんの作文を見せてくれました。「へえ~、そうなんや~。どれか、読みたいやつ、みんなに読んでくれる?」というと、「これにするわあ」と犬の写真を貼った自由作文を読み始めました。
  ちーたんのこと
 
 なまえはちかこでした。16年いきました。
 目もみえないし、耳もきこえないし、鼻もにおわない
 さいごはたてなくなり、ごはんものみこめなくなりしんでしまいました。
 かなしくなり、お花をいれてあげました。
 
読み終わったあと、しばらくしーんとしていました。
 その男の子が感じた悲しみが、伝わってきました。
 しばらくしてから、「この写真が、ちかこ?」などいろいろ話がでました。
 自由作文では、自分が書きたいことをかき、伝えたいことを伝えていきます。その男の子が、悲しかったできごとを選び、書き、みんなに伝えていき、周りもその気持ちを受け入れていったことがすごいと思いました。
 自分をみつめ書くことが、その子のなかでたしかなものと位置づいてきたと同時に、悲しみを書いて伝えることができるのは、周りの友達も自分の気持ちを受け入れてくれると、その子が感じているからだと思いました。