哲学から遠いものから、哲学にたどりつくかどうかの実験


中学部の1・2年生との日本語共同の時間。
哲学の時間に何をするか話し合ったところ、中2の女の子から「一見、哲学に遠く見えるものから、哲学にたどり着くかどうかの実験をやってみたい」ということになり、「食器用洗剤」から始めてみることにしました。

そのアイデアが生まれた時間についてはこちらをご覧ください↓

詩と哲学への道の実験と 

 

どんな話し合いになるのかよくわからない中で始まった1回目。

まずは、個人で「食器用洗剤」という言葉から、思いつくことを考えてもらい、それを発表してもらいました。
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「スーパー」「人工」「洗う」「汚れ」「常備している」「手」「主婦」などのほかにも、「キュキュット」という商品名まで、たくさんのことが出できました。

「ここから、どうしていく?」と、中学生のみんなに尋ねてみたところ、

「ここから、さらに何が考えられるか、考えてみたらいいんじゃない?」

「意見は、付箋に書いて動かせるようにしたらいいと思う。」とのことで、
次回は、今回出てきた言葉をグルーピングしてみて、そこから何が考えられるのかを考えてみることが決まりました。

 

こうして迎えた2回目。
まずは、前回でてきた言葉をグルーピングするところから始まりました。
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グルーピングしてみると、6つのグループができることがわかりました。
「ここから、どう進めていこう? 何か見えてくることってあるかな?」とたずねると、

「作っている人と、使っている人と、環境について考えてみたらどう?」という意見が出て、

ピンクの付箋は、利用する側。

水色の付箋は、研究・販売する側。

黄色の付箋は、環境に関係すること。

この3つについて、見えてきたことや感じたことなどを、それぞれが書いていきました。

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ピンクの付箋には、「どういう物を買う人が多いのか」「最近は環境を気にしている人も増えているのかな?」

「使う人は、汚れが速く落ちてほしい」「使う側が自分の使っているもののことを考えるのもいいと思う」などの

意見が書き込まれました。

 

青い付箋には、「使いやすさ」「日々改良されている」「商品開発に時間がかかっている」「売れるものを大切にしている」「汚れの落ちやすさに努力している会社が多いんじゃないか」などの意見が書き込まれました。

 

黄色の付箋には、「油汚れが一瞬でとれるのは、自然にはよくないんじゃないか?」「ついていても大丈夫な菌まで除菌しているのでは?」「環境にいいものも悪いものもある」などの意見が書き込まれました。

 

 

「それぞれが感じたことや考えたことを書いた付箋も貼ったものを見た時に、食器用洗剤からどんなことが見えてくる?」と質問すると、

「汚れを落とすってことばかりを考えていくと、環境に目が行きにくい」

「ササッと洗えるとかって、簡単に洗えることばかり考えている」

「安いものを買うことがあって、安い洗剤は環境への配慮がないものが多いかも」

「油汚れさえもすぐに落ちるって、便利やけど、環境のことをあまり考えていない」

などの意見が出てきました。

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「君たちはどう生きるのかって本があるんだけど、結局そういうことにつながると思う」

「人間が自分のことばかり考えていると、地球がダメになるってことやな」

「便利とか、速いとか、そういうことばかりを求めすぎていると思う」

などのいう意見もさらに出てきて、結局、食器用洗剤について深く考えてみると、「人間の身勝手さ、エゴにいきつく」ということが、このメンバーがたどりついたことでした。
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「食器用洗剤から、こんなことがわかるなんて思わなかった~」

「食器用洗剤は、案外簡単やったから、次は『消しカス』ぐらいからやったらいいと思う」

などと言っていた参加者のみなさん!

終わった後には、とってもすっきりした表情をしていました~

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今回の日本語共同の哲学は、中学生の人たちの提案で進めていきました。
どうなることかよくわからないままでしたが、中学生の人たちが真摯に向き合い、
考えることを引き受けていってくれたことで、
食器用洗剤が、人がどう生きるか、自分は何を選んでどう生きるかにつながっていることにたどりつきました。

何となく、便利さや安さを追い求めている現代社会において、中学生たちの気づきは、それぞれの未来の選択をかえていくものとなったのではないかと思いますし、一緒に学ぶ機会に恵まれた私にも、大きな示唆を与えてくれました。

(M.F)