数の不思議-おとな版-


「おとなの森」の催しとして、今回はじめて「おとなの数の不思議」が開催されました。

その趣旨は、こどもの森学園の選択プログラム「かずの不思議」を、数理的な不思議さと美しさの感覚を、おとなも楽しむ機会を設けることでした。学園のホームページやフェイスブックを見て短期間に7名の方が応募され、当日6名が参加されました。

 

<金属のシャボン玉> 参加者全員が揃うまで「トロフルックス」という不思議な動きをするオモチャを披露しました。希望者は操作して、回転をコントロールする心地よい感覚を体験してもらいました。キラキラ光る回転体を見たときの驚きの反応は、学園のこどもたちと全く同じです。

 

「こどもの数の不思議」で撮った写真

 

 

<幸せのオミクジ> 先ず、写真のようなオミクジの紙とおはじきを配り、演者の指示通りにおはじきを動かしてもらいます。最後のとき以外の向きは自由です。途中、回数も向きも全く自由に動かせる場面も設けられています。そして最後に「右向きに2回動かしてください」の指示が発せられた途端、それまでバラバラな動きをしていた全員のおはじきが、すべて「大吉」に集まっている! という数理マジックを体験しました。(別名マインドコントロール・マジック)

 

オミクジ用紙の上を動くおはじき

 

 

再実験後「自由に動かしているのに、なぜこんなことが起こるのでしょう?」の問いかけに、お一人が挙手して「明確に説明することは出来ないのだが…」といいつつ、本質を押さえた理由を述べられました。これを受けて、このマジックは誰でも知っている整数の性質を利用していることを解説しました。殆んどの参加者が「なるほどそうなのか、分かった!」と納得されました。

最後に、本質が分かれば条件を変えても同じ現象が起こせることを、実験して確認しました。

 

説明中の参加者と、それを聞く筆者

 

 

<裏返すだけで増減する面積> 太陽に向かってニコニコしている三本のヒマワリの絵が描かれた長方形の紙(5つのパーツで構成)が机上にあります。それを演者が目の前で裏向きに並び替えると、太陽が消えて、三本のヒマワリがしょんぼりとうつむく絵に変わりました。つまり太陽の絵が描いてある紙の面積が目の前で消滅したのです! (写真をご覧ください)

 

 

       
「太陽とヒマワリ」の絵を、坂道を裏返してから、坂道の上側も裏返えしたところ

 

逆に、右側から左側に裏返すと、今度は太陽の絵がきちんと収まって、面積が元通りに回復しました。みなさん全員が「エエ!」という表情。ところが再度裏返すと、さっきは減った面積が、今回は変化しません。「なぜ、こんな珍現象が起こるのでしょうか?」と投げかけて、「太陽とヒマワリ」の絵を手に取って自由に動かしてもらいました。理由が発見できた方、もやもやしてよく分からない方など、様々なままの状態で一時休憩に入りました。

 

<増減する面積の続き> 10分の休憩後、別な面積変化を全員で観察しました。今回は、5つのパーツからなる定三角形の2つのパーツの位置を入れ替えると、定三角形の面積が1だけ増減する現象の観察です。これをみて、「ネット上で見たことがある!」との声が複数の方から上がりました。ヒマワリの図形は方程式を解いて決定しますが、三角形はフェボナッチ数列を利用しています。2つの現象は似ているが原理の仕組みは異なっていることを説明しました。

 

三角形のパーツを動かす筆者の手もとをじっと見つめるみなさん

 

 

ホワイトボードから読み取れる三角形の辺の長さとフェボナッチ数列の関連

 

 

<直線で曲線を描く> 最後は、一定のルールで直線を引くと次第に曲線が見えてくる実験です。

実験は全部で3回。初めの2つは基本枠の2線分の角が90度と30度と異なるだけで、直線を引くルールは同じもの。2線分の交点を原点0にして、それぞれ1,2,3,…と数字を記して、片方の線分上の点Pの数字と、もう片方の点Qの数字の和が同一になるペア同士で線分PQを次々と引いていきます。その結果が下の写真です。直線しか引いてないのに曲線が見えます。この曲線はみなさんも知っている放物線です。頑張れば高校の数学で証明できます。

 

3つ目は、円周に0から50まで51個の数字を等間隔で配し、点0の位置から2点P,Qを点QはPの2倍の速さで動かします。(例えば、Pが7,8,9 …のとき、Qは14,16,18 … の位置です。ただし、Qの位置が50を超えたら、その数から50を引いた数字の位置にします)

PとQの位置を計算して表にまとめ、直線OPとOQをすべて引いて得られたのが下の写真です。

3曲線は、直線群(曲線の接線群)の包絡線とよばれる曲線です。ついでに3D版も披露しました。

計算表とハート型の曲線(カージオイド)が見えます

 

 

最後に、とても好意的な感想をみなさんからいただき、全員で記念写真を撮って終了しました。

 

(補足)今回は、時間が不足したので「17番目の不思議」はカットさせていただきました。

次の機会に楽しみましょう。   (M.M.)